僕は劇団に入って以来、20年近くにわたって児童教室に携わってきました。劇団の児童教室は内気な子や引っ込み思案の子に活発になってもらうことを目的とした教室で、ストレッチに始まり、ダンス、発声やお芝居と続きます。5歳から小学校6年生までが4〜5クラスに分かれ、毎週1回、1時間半のクラスを行っています。毎年たくさんの子供たちがやってきては楽しく遊び、元気に発表会をやって、卒業していきます。昔通っていた子供たちの中には、大学生になった今でも連絡をくれる子もいます。本当にうれしいことです。
僕は教室では、発声やお芝居を担当することが多いのですが、その中でも子供たちに人気のあった発声のゲームや、発表会で実際に使った台本をご紹介しようと思います。
内容としては、小学生向けのものが多いです。小学生は本当に成長が早いので、低学年、高学年でゲームの内容がずいぶんと変わってきます。教室ではいろんな学年の子供たちが混じっているので、参加している子供たちの性格を見ながら、ゲームをアレンジしていきます。(もちろん、おにごっこやだるまさんがころんだ、のような、みんながよく知っているゲームもやりますよ)
最初のうちは、大きな声を出す練習や、クラスの子同士が仲良くなれるようなゲームを考えます。内気な子はうまく声を出せない子が多いので、体を大きく動かすことから始めます。声が出せない子は、体の動きも小さくなりがちです。これはダンスの授業の時も含めてですが、体を大きく動かせるようになると、自然と声も大きくなってくるものです。まずは教室で体を動かすこと、声を出すことへの抵抗感を無くしてもらいます。
声だし
発声のゲームを始める前の、のどの準備運動です。
窓の外など、遠くを見ながら声を出すと、大きな声が出しやすくなります。また走りながら「あー!」と叫んだり、ジャンプしながら「あ!あ!あ!」と連続して声を出したり、先生を取り囲んで「あー!」と声を出したり、ゴロゴロ転がりながら声を出したり…いろんなことをしますが、体を動かしながら、というのが基本です。
また、小さくなって小さい声、大きくなって大きい声など、体と声を連動させて声だししたりもします。
発声ゲーム1 崖登りゲーム
教室の床を崖に見立てて、一方の端からもう一方の端まで、(ほふく前進のように)登っていきます。時々先生が邪魔に入り、邪魔された子は下まで転がって落っこちたりします。また、先に上までたどり着いた子は、他の子を応援したり、手を伸ばして助けてあげたりします。
アレンジ 冒険ゲーム
崖登りの他、床に引いた線の上を綱渡りしたり、地面の割れ目をジャンプして飛び越えたり、いろんな障害を連続して越えていきます。
子供たちは転がったり飛び跳ねたり、普段できない動きをするのが大好きです。でも、公共の場所でそういうことをしたら、まず怒られますよね。ですから先生たちが率先して大きな声を出しながら、転がったり飛び跳ねたりを大仰にやってみせることで、そういうことをやっていい場所なんだ、と教えてあげます。
また、互いに仲よくなるには、他の子のことを知ることも大事です。同じものが好きな子を探すゲームや名前を覚えるゲームなども考えますが、ここではごくシンプルな他人紹介をご紹介します。
発声ゲーム2 他人紹介
自己紹介ではなく、他人紹介です。2人組やグループを作り、名前や年齢はもちろん、好きなものや嫌いなものなど、何らかのお題を決めて聞きあってもらいます。大事なことは、子供たち同士で聞いてもらうこと。そして仲介に入った先生は、そのお題について、他の子に話を振ったりして、子供たち同士が話をできるように場を盛り上げます。
アレンジ
もうみんなが仲よくなった頃には、ちょっと変わったお題について話しあってもらいます。たとえば夏休みの前には、「みんなは今から大金持ちです。大金持ちの夏休みの計画を立ててみて」というような感じです。面白おかしい計画が立ち、大笑いしながら話し合うことができると、お互いをより深く知り合うきっかけになります。
発声ゲーム3 ボール運びゲーム
4〜6人くらいのグループになってもらい、グループごとに1つ、教室にあるバランスボールを渡します。そしてこのゲームの間は、いっさい何もしゃべってはいけません。先生が、ジェスチャーだけで何をするかを指示します。
たとえば「ボールをあっちの角まで持っていって」とか、「ドリブルしながら一周してきて」とか、「頭の上に持ち上げて、そのまま往復」とか…。そして絶対みんなが大好きなのが「あの先生にぶつけてきて」というもの。
でも何をするにしても、必ず全員一緒にやります。大きなボールなので、みんなで一緒に持ち、みんなで一緒に運びます。もしだれかが指示を読み間違えていたとしたら、これまたジェスチャーでお互いに教えあってもらいます。
お友だち同士で、みんなで一つのことをやってもらうことも、大事な要素の一つです。そしてこのゲームは、先生やお友だちの言っていることを、真剣に読み取らなくてはいけません。まただれかが間違えた時には、がんばってそれを相手に伝えなくてはいけません。言葉という手段を封じているからこそ、コミュニケーションそのものに真剣になってもらうことができ、またゲームとして楽しんでもらえます。
続きでは、もうちょっと慣れてきたころにやるゲームをご紹介します。