演出のやり方講座

演出をやり”始め”るためのいくつかのヒント

by. 渡辺和徳


演出のやり方と、脚本の書き方


これまで、僕のサイトでは「脚本の書き方講座」を掲載してきました。
これは演劇に限らず、すべての脚本を書く方のためのテクニックの、ほんの一部でした。おかげさまで、たくさんの方に見にきていただいているようで、とてもうれしいです。そちらの拡充もしたいのですが、今回は”演劇”における“演出”のやり方を簡単に書いてみたいと思います。

演出のやり方と脚本の書き方は、実はとても密接な関係にあります。
なぜなら演出とは、脚本に書かれたことを具現化する上で行われるすべての過程を言うからです。書き手の意思を無視した演出はあり得ないわけですから、脚本を書く上で重要なポイントは、同時に演出する上で重要なポイントなのです。

ですから、この講座の中でも、脚本の書き方のページと行ったり来たりしながら解説をしたいと思います。そして「脚本の書き方」同様、演出の方法論も世の中には山ほどあることを、まずは理解しておいてください。ここで解説しているのは、その中のある一つの方法にすぎません。方法論は、いくつ持っていても損はありません。たくさん学んでください。

そして一番の勉強方法は、トライ&エラー=実践である、ということを忘れないでください。


次回公演


9PROJECT「出発」

作:つかこうへい 演出:渡辺和徳

料 金:一般 ¥3,500/学生 ¥2,500
日 時:2017年2月7日(火)〜12日(日)

7日(火)19:00
8日(水)14:00/19:00
9日(木)14:00/19:00
10日(金)19:00
11日(土)14:00/18:00
12日(日)14:00

場所:SPACE 梟門

公演サイトはこちら!


演劇とは何か?


はじめに、演劇とは何かということを定義しておきましょう。
演劇には基本となる4つの要素があります。それはすなわち、戯曲、俳優、舞台、そして観客です。

戯曲

戯曲はもちろん、演劇におけるもっとも重要なものです。
演出者は脚本を理解し、どう表現するかを考えなくてはなりません。
そのために、戯曲=物語とはいったいいかなるものであるか、ということを理解していなくてはなりません。

 これについては、「物語とは何か?」の項で詳しく解説します。

俳優

戯曲には必ず人物(たとえ人間でないにせよ)が出てきます。
紙に書かれた人物を具現化するにあたっては、俳優という人間の肉体が必要になります。僕はよく、この“肉体”という言葉を使うのですが、どんな”肉体”をもった俳優が役を演じるかによって、その演劇は大きく姿を変えます。

 これについては、「配役」の項で詳しく解説します。

舞台

そしてもちろん、俳優が演じる場所が必要になります。
ある脚本を具体化するにあたってどんな舞台をどう使うのか、ということは、演出に置ける重大な要素ではありますが、このページでは割愛します。

観客

これは、当たり前すぎてよく忘れられてしまうポイントなのですが、観客のいない演劇は演劇ではありません。少なくとも、僕はそう定義しています。
物語とは人に”伝える”ためのものです。

読み手のいない小説は、小説足り得るでしょうか?
観客のいない演劇や映画は、演劇(映画)足り得るでしょうか?

もちろん、たとえ観客がいなくても上演されればそれは演劇である、という考え方もあるでしょう。
ですがそれは、脚本を読んだときに頭の中で思い描かれる演劇と同じ、うつろなものに過ぎません。どんな物語も、だれかに伝わって初めて完成するのです。

これは演出者が、決して忘れてはいけない重要なポイントです。
作っただけでは、完成ではないのです。観客に見せただけでは、完成ではないのです。伝わって初めて完成なのです。


この4つの要素をふまえた上で命題に戻ると、演劇とは「ある一つの物語を、その物語に登場する人物を表現するに足る肉体を持った俳優によって、舞台において実際に上演され、観客に何かを伝えるもの」ということになります。

当たり前の結論ですか?
ですが僕は、これが忘れられた状態で作られた演劇を、山ほど見たことがあります。


演出/演出者とは何か?


では、演出とはなんでしょう?
先ほどの演劇の定義から導き出すなら、演出とは「ある物語が伝えようとすることを、俳優の肉体を通して、舞台の上に具現化し、観客に正しく伝える作業の全過程」であると言えます。そして演出者とは「その全過程を正しく進行し、ある一つの思想においてパッケージ化する人間」です。

今、パッケージ化という新しいキーワードを使いました。
それはいったいどういうことなのか、まずは物語というものについて解説しながら見ていこうと思います。