脚本(台本・戯曲)の書き方講座~だれでも脚本を書き”始め”られる!

物語は、キャラクターによって作られる。 | 脚本(台本・戯曲)の書き方講座

実はこれまで、あまり深く触れずに来たことがあります。
それはキャラクター(=登場人物)というものについてです。
講義1のシリーズの中でも、このキャラクターというものについては、サラッと流してきました。
説明が複雑になりすぎることと、全部書いてしまうとお金を出して劇作家コースに通ってくれている人に申し訳ないからです。(笑)
ですが最近、このページを見に来てくれる人がとても多いので、何度も来てくれている人のために記事を追加してみようと思います。
劇作家コースに通っている人たちには、別の特典をつけることにしましょう。

■物語は、キャラクターによって作られる。

キャラクターというものについて考えていくと、脚本を書く際に、大きくわけて2つのパターンがあることに気がつきます。

 1.ストーリーに合わせてキャラクターを配置していくパターン。
 2.キャラクターのコミュニケーションからストーリーを生み出していくパターン。

断言します。
脚本を書く上では必ず2番です。

誤解のないように言っておきますが、大ざっぱな話の流れなどは、当然先に考えておく必要があります。
それはキャラクターを適切にコントロールする上で重要なことです。

さて、ではなぜ2番なんでしょうか?
簡単なことです。脚本というものは、基本的に人と人とのコミュニケーションを描くものだからです。
ですから、物語というものは、人と人とのコミュニケーション、ぶつかり合い、心の交流から生まれてこなくてはいけないのです。
先にストーリーを作って、それに無理やりキャラクターをはめ込んでいってはいけないのです。

もちろん、先にストーリーを作ったって、ちゃんとコミュニケーションがとれているなら良いんです。
慣れてくると、キャラクターとストーリー、両方を同時に考えることができるようになります。
ですから方法論としては、1番はありです。結果的に2番のようになっていればいいだけのことです。

ですが、ここを読んでいるような人であれば、まず間違いなく失敗します。
ストーリーに合わせて、キャラクターをねじ曲げてしまうからです。
そういう脚本は、上演してみれば一発で分かります。
役者たちも一貫性のないキャラクター像とセリフに、困り果てることでしょう。

極端に言えばこういうことです。

 物語はキャラクターが作るものである。
 脚本家が作るものではない。

脚本家がやるべきは、きちんとした個性を持ったキャラクターを創造することです。
それができれば、脚本家が何もしなくても、キャラクターたちは勝手にぶつかり合い、心通じ合い、物語を進めていってくれるでしょう。
もし、きちんとキャラクターを作ったのに、物語が生まれてこなかったとしたら、それは作るべきキャラクターを間違えているのです。

つまり脚本を書く上で重要なのは…

 物語を生み出してくれる、ぶつかり合えるキャラクターを創造すること。

ということになります。

■主人公の流れが、物語の流れを作る。

あえて言うまでもないほど当たり前のことですが、物語の流れを生み出すのは主人公です。
というよりも、それを生み出しているから主人公と呼ばれるのです。
だから、どんな脚本も必ずきちんと主人公足りえているかというと、そんなことはありません。
僕が劇作家コースで一番よく見る過ちの一つが、「主人公が何も変化しない」脚本です。

そんなことがあるのか、と思われるかもしれませんが、よくあります。
正確に言うと、「抱えている問題を最後に解決するまで、迷い続けるだけで何も変化しない」脚本です。

主人公は常に変化し続けなくてはいけません。
主人公が悩み、苦しみ、喜び、救われ…そういう流れがそのまま物語の流れとなるのです。
(そしてもちろんその横には、主人公を悩ませ、苦しませ、喜ばせ、救ってあげるキャラクターが必要です。)
主人公の気持ちが盛り上がれば、物語も(つまりは芝居もお客さんも)盛り上がるし、主人公が落ち込めば物語も落ち込みます。

変化をするということは、何かを選択し続けるということです。
ただ周りに影響されるだけではいけません。
ただ悩み、迷うだけではいけません。
常に何かを選択し、その結果として時に過ちを犯し、時に決断をし、時にだれかを救うのです。

■ちょっとした反応が、芝居を面白くする。

ここまでは芝居におけるマクロな視点での話をしてきましたが、少し細かいところにも目を向けてみましょう。

あるシーンで、Aさんが友人のBさんにオススメの店につれて行かれました。
しかしそこは、見た感じボロい、小綺麗とは言えない店でした。
そこで「ちょっと嫌だな」という反応をしました。

さて、この時Aさんはどんな反応をするでしょうか。
単にそのボロい店に抵抗があるといっても、どの程度の抵抗があるのでしょう?

 絶対あり得ない!
 えー…まあ、つきあうけど…
 別に良いけど、今日は気分じゃない。

それによって、当然反応は違いますね。
そしてそういう「嫌だな」という感じを、どういう風に表に出す人なんでしょうか?

 感情はストレートに表に出す。
 そういうことはなかなか言えない。
 絶対見せない。
 普段はストレートだけど、今日はBさんに悪い事をしちゃったから、黙ってる。

Bさんとの関係も重要ですね。

 何でも言い合える仲。
 まだ親しくなって日が浅い。
 前は仲よかったけど、最近疎遠になってた。
 ケンカ中。

これらを組み合わせると、いろんな人物像が浮かび上がってきますね。

 Bさんとは何でも言い合える仲。
 Aさんは感情をストレートに出すタイプ。
 こんな店は絶対あり得ない。

だったら、反応としては「え、うそ!こんなとこ絶対あり得ないんだけど!」みたいなセリフになるかもしれません。

 Bさんとはケンカ中。
 Aさんはそういう言うことをなかなか言えない。
 こういう店も別に良いけど、今日は気分じゃない。

だったら、「……」と無言で抗議するかもしれません。

ストーリーを先行して考えていると、こういった細かい部分は深く考えずに、ストーリーにとって都合の良いように行動させてしまいがちです。
しかしながら、こんな非常に大ざっぱな例でも、Aさんのキャラクターはずいぶんと違ってくることが分かると思います。

キャラクターのイメージがきちんとできていると、こういうところで迷わず行動させることができるはずです。
そして、意外にもこういうところが、脚本を面白くするきわめて重要な部分なのです。
全体の流れが面白いことはもちろん重要ですが、その全体像をお客さんがきちんと見てくれるかどうかは、瞬間瞬間にお客さんを飽きさせることなく、楽しませているかが重要だからです。
そのためには、こういう細かい所作を、きちんと詰めてやる必要があります。

キャラクターというのは、深めれば深めるほど、物語を面白くしてくれるものなのです。

■キャラクターは、最初から全部決めつけない。

と、ここまで書いてきたのを読んでいると、キャラクターは最初にきっちり作り上げておかないといけない、と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
講義1シリーズで散々書いてきたこと、「漠然と」がここでも生きてきます。
最初からカチカチに設定を決めすぎると、せっかく生まれてくるはずだった新しい発想を奪ってしまいます。

物語を生み出していくための、最低限の大枠だけ決めたら、あとは書きながら決めていきましょう。
あるセリフを書くごとに、「こういう時、このキャラクターはどう考えるかな」「どういう反応をするかな」ということを、常に考えながら書いていくのです。
そうすれば、どんどんキャラクターは深みを増していくはずです。
ただし、重要なことは、

 ストーリーに合わせるために、キャラクターを破綻させないこと。

キャラクターにできない行動は、絶対にさせない。
物語をある方向に持っていきたいのなら、どうしてもそういう方向にしかいけない状態に、キャラクターを追い込んでやることです。
その状態の追い込むためには、一体どのキャラクターのどんな行動があればいいのか。
それを考えるのです。
物語は、あくまでもキャラクターから生まれなくてはならないからです。

そして、もしキャラクターを深めていくうちに物語を変えたくなったら、またプロットに戻りましょう。
必要ならば、役割やテーマに戻りましょう。
これは決して遠回りではありません。
キャラクターが深まった分、より濃密なプロットが作れると思います。
そしてその分、脚本を書くのは楽になるはずです。

今回も、いろんなことを書きましたので、ざっくばらんにまとめておきましょう。

物語は、必ずキャラクターのコミュニケーションから生まれてくる。
その中でも、物語全体を動かす人が主人公となる。
キャラクターは最初に決めすぎず、書きながら決めていく。
キャラクターは深めれば深めるほど、反応させればさせるほど、脚本は面白くなっていく。

以上です。

戯曲の書き方講座

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渡辺和徳(脚本家・演出家・俳優)

脚本家、演出家、俳優。大学時代より演劇を始め、1999年、★☆北区つかこうへい劇団に7期生として入団。劇団公演に出演の傍ら、つかこうへいのもとで作・演出を学ぶ。

近年は劇団公演の演出の他、外部では商業演劇の脚本等を担当し、活躍の場を広げている。2003年からは、劇団劇作家・演出家コースの主任講師を担当。

主な脚本作品

少年隊PLAYZONE(脚本等)/明治座「あずみ」(潤色)/新宿コマ劇場・青山劇場「SAMURAI 7」(脚本)/青山劇場「女信長」(脚本)/シアターコクーン「広島に原爆を落とす日」(構成)/明治座「新説・天一坊騒動」(脚本)など

渡辺和徳

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