3-5. 筆が止まった! – なぜ書けなくなるのか

プロットをどれだけ練り上げていても、途中で書けなくなることはよくあります。これはもう仕方ありません。そういうことはあるのです。全体を見渡しやすい短編などではノンストップで書けてしまうこともままありますが、長くなってくるとこれはもう無理です。

ですが、これは一概に悪いことだとは思いません。プロットが十分でないために書けなくなるのであれば、プロットに戻ればいいだけだからです。逆に、プロットが乱れていても強引に書き進められてしまうタイプの人は、推敲を繊細にやるべきです。なんとなくできた気になってしまって安心することが、一番危険です。

重要なことは書き終えることではなく、良い作品を観客に届けることだからです。

足りないものは何か?

それでは、書けなくなる理由の中でありがちなものをあげていきましょう。プロットが乱れて止まってしまっている場合、基本的には、前述した四つの要素、キャラクター・関係性・目的・場所のどれかがずれてしまっているために起こります。

  • (キャラ)こいつが怒り続けてるからダメなんだ、どこかで頭を冷やさせてよう
  • 関係性)この二人の関係性が間違ってるから、どうしてもここで何にもできなくなっちゃうんだな
  • (目的)主人公を壁にぶつけようと思ってショッキングな出来事を用意したら、目的が失われて動くに動けなくなっちゃった
  • (場所)こんな安心できる場所にいるから、いつまでも動く気にならないんだな

などなど…。冷静に書いているものを見直して、どこがずれているのかを見つけましょう。この後、各要素について、もう少し詳しく見ていこうと思います。

キャラクターの行動原理を理解できていない

キャラクターの乱れで多いのは、そもそもそのキャラクターのことを自分が十分に理解できておらず、こういうときにどういう風に行動するのかいまいち分かっていない、というパターンです。

そういう時は、そのキャラクターの普段の生活をたくさん想像してみましょう。よく、キャラのプロフィールを作る、と言われますが、それをやってみるのもいいでしょう。キャラクターのことを理解し、仲良くなれば、自然と動き出してくれます。

あるいは、そのキャラクターの持っている役割や、自身のストーリーを確認してみるのも良いかもしれません。持っている役割が少なすぎるようなら、何か足してみましょう。他のキャラクターの役割をもらってみるのもいいかもしれません。そのキャラクターの求めているものが分かれば、また動き出してくれるかもしれません。

たいていの場合、物語が進行するに従って、キャラクターの葛藤や「今、何をするべきか?」という選択肢は増えていきます。そして中盤を越えて後半にかけて、物語が収束に向かっていくと、キャラクターたちも迷いが減って選択肢は少なくなります。

もし、前半から選べる選択肢が一つしかない。一向に増えないとしたら、それはキャラクターを限定しすぎているのかもしれません。キャラクターを深めることを考えてみましょう。

物語は、キャラクターによって作られる。

決心できない主人公

葛藤を抱えた主人公というのは良いものですが、陥りがちなのが悩むばかりで何も選択しない主人公です。周りの人物はあれこれをアクションを起こしてくるのですが、本人は「うーん、でも…」と悩むばかりで動きません。次第に周りが息切れしてきて、何もできなくなり、全員が沈黙してしまいます。

主人公は、葛藤という沼にズブズブと沈んではいけません。葛藤というのは、いまにも崩れ落ちそうな橋の上にいるようなものです。無理をしてでも選択し、行動し、結果として喜んだり後悔したりしながら、葛藤を深めていくものです。

人公が行動し続ける限り、物語が動かなくなることはありません。

関係性が拮抗して、動くに動けない

互いの目的が拮抗し合う関係性というのは、良い緊張感を生みます。Aはこれをしたいのに、Bはさせてくないから邪魔をする。とても良い関係です。しかし時折、互いに牽制しあって、全く動けなくなってしまうことがあります。

そうならないように、まずは力関係に差をつけてみましょう。拮抗して動けなくなるのは、互いの力量が同じだからです。関係性に上下をつけてもいいですし、単純に人数が違う、でも構いません。思いの強さが違う、というのもいいでしょう。力関係が違えば、どちらかが動いてくれるはずです。

または、揺らぎを持った人物を配置するのも良い手です。例えば、ある一つの目的を持った集団の中に「これでいいんだろうか?」という疑問を持った人間を配置しておきます。集団同士の対決の場で拮抗してしまった時、「本当にこれでいいの?」と声をあげてくれるはずです。これは別に人物でなく「心の中の迷いの声」でも構いません。

こうなりやすい原因としては、人物に対するレッテル貼りが挙げられます。「この人はこう!」と決めつけて行動させていくと、拮抗状態になりやすいです。いつでも関係性を変化させられるように、どこかにゆらぎを用意しておきましょう。

目的が失われている

主人公(あるいはそのシーンの主体となるキャラクター)の目的がなくなってしまっているパターンです。目的がないので、何も行動のしようがない。だれかがなんらかのアクションを起こしても、基本的な「いまこれをしたい」がないので、明確な反応を起こせなくなってしまっているのです。もうちょっと雑な言い方をすると「あ、やばい、今することがない」という状態です。

これは、巻き込まれ型で流されるように行動してきた主人公に、大きな壁を与えた時に起こりがちです。もともとやりたくてやっていたわけではないので、頑張って乗り越える気もないし、かと言って後戻りもできないし、必死になるほど追い込んでくる存在もない、どこにも動きようがなくなってしまうのです。

それ以外にも、八方ふさがりになってしまって動けない、というのもあります。八方ふさがりというのは、うまく使えば主人公に対して強いストレスを与えられますが、同時にだれかに何かしてもらわないと動けない(=主人公が物語を展開させられない)指示待ち状態になってしまいがちです。

このパターンに陥った時は、いったん前を見直さないと解決しないことが多いです。主人公を突き動かす熱意を持った人間を作っておいたり、別の選択肢を用意しておいたり、主人公が何でもいいから動かずにはいられないような状態で壁にぶち当てたり…。

壁は必要ですが、動けなくならないように注意してプロットを考えましょう。

視点を変えてみる

四つの要素を見直してみても、何が悪いのかが分からない、見つからない、という時もあります。そんな時は、いったん視点を変えて別のキャラクターになりきってその物語を体験してみましょう。

視点が変わると、見え方はずいぶん変わるはずです。今まで自分がおろそかにしていた部分矛盾している部分が見えてくるかもしれません。もしかしたら、そのキャラクターがいつの間にか、まったく行動しなくなっていたことに気づくかもしれません。いろんなキャラクターの視点で見直して、問題を起こしているところがないか、探してみましょう。

そして解決策を練る時には、今の流れに合わせることを考えてはいけません。動かなくなっている物語に何とか合わせようとしても、またすぐに問題を起こします。せっかく視点を切り替えたのだから、自由な発想に任せましょう。

単純に、自分が自分の書きたいものをわかっていない

これは、不思議なくらい、よくあります。ああもできる、こうもできる、でもどれがいいのかわからない、というパターンです。

こういう時はプロットの段階で、十分に納得しないまま書き始めていることが多いです。もう一度、自分が何を書きたいのか、書くべきなのかを見つめ直しましょう。おそらく、手が止まる一番多い理由は、これです。

解決の早道は、プロットに戻ること

執筆で問題が起こったら、プロットに戻るのが一番の早道です。もっと単純な構成を見直すのも良いでしょう。何度脚本を読み返したところで、視野が狭いままではいい解決策は浮かびません。いったん視野を広げて、物語全体を見渡して、何が問題なのかを考えるべきです。

そして何よりもやってはいけないのが、ご都合主義な出来事を起こして事態の打開を図ろうとすることです。前述の通り、出来事は人の意思もとに起こらなければなりません。物語を突き動かす意思を見つけ出しましょう。

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