4-1. 推敲 – 物語を見直すための3つの視点

物語を一度書き終えたら、推敲をしなければなりません。僕は推敲には、3つの視点が必要だと考えています。

キャラクターの内面

キャラクター、特に主人公が破綻していては、物語は成立しません。特に注意したいのが、その内面です。表向きはそれっぽく行動し、不自然に見えなくても、内面がぐちゃぐちゃになってしまっていることはよくあります。これは、表向き起こっている出来事に引きずられて、ご都合主義で行動させてしまっている時に起こります。

推敲の際には、全てのシーンにおいて(主人公が出ていない間も含めて)主人公が本当は何を考え、何を目的に行動しているのか、この時点の表向きの目的と、内面の目的は何か、十分に精査しましょう。そして主人公の流れが正しければ、サブキャラクターが破綻していないか、きちんと主人公に影響を与えているかを考えましょう。

全てのキャラクターが破綻していないことは、物語において重要です。

観客の情報

2つめは、観客が受け取る情報の順番です。

作家は、様々なシーンで起こっていることの、その裏側を知っています。各キャラクターが、本当は何を考えているかを知っています。しかし、観客はそうではありません。ですから、何も知らないまっさらな状態で、観客が「シーンから受け取る情報が何か」を確認することは重要です。そのシーンは、観客に「何を見せるためのシーンなのか」ということです。

その際に重要なことがあります。

  • あらすじを作って満足しない
  • 書かれている文字ではなく観客の受け取る印象から判断する

プロットの章で使った例を使って考えてみます。あらすじを作って満足してしまう例は、これです。

「貧しい少年が町にやってきて、少女と出会った」

たしかにそうです。間違っていません。でも推敲の時には、もっと観客の印象にフォーカスしましょう。

まず少年が出てきたところでは、「だれか出てきた」と思うでしょう。それから「フラフラしてるな」と思うかもしれません。倒れたり、お腹を押さえたりすれば「腹減ってるのか」と思うでしょう。では、その少年が町に並んでいる食料を見ていたら、どうでしょう。哀れそうにじっと見ている少年の姿です。「食べたいんだろうな」というのは、もちろん情報として受け取ってくれるでしょう。

「だれか助けてやれよ」というのはどうでしょう? これは情報というより、観客の中に呼び覚ましたい感情ですね。情報と呼び覚ましたい感情は、別に精査すべき問題です。それにまだ冒頭で、少年に対する感情移入がなく、またどんな話かも分かっていませんから、観客は「さて、どうなるのかな」と冷静に見ていることでしょう。

さらに進んで、ここで、盗もうとするんだけどためらう、という行動があれば「この子は良い子なんだな」という情報が与えられるでしょうし、盗む必死さで飢えの度合いが情報として伝えられるでしょう。

もうちょっと付け加えつつ、整理してみます。

  1. だれか出てきた。
  2. フラフラしている。
  3. どうやら子供だ。
  4. 腹が減ってるらしい。
  5. 食べ物を盗もうとしているな。
  6. でも盗むのをためらう良い子だ。
  7. だけどどうにも我慢ができない様子だ。
  8. どうやら相当にひどい状態らしい。
  9. (1〜8全部まとめて)どうやらこの子がこれからどうなっていくのかを見る話らしい。

これが、このシーンの情報の順番です。この順番が、矛盾したりわけの分からないものになっていないか、十分に観客の期待を持たせるようになっているか、確認しましょう。

自分の書いたものを、第三者の視点で見つめ直すのは、とても難しいものです。文字を追いかけていくと、「ここでこれを書いてあるから、客は分かってるはずだ」という(自分に都合のいい)思い込みを持ちやすいものです。ですから、

  • 書かれている文字ではなく、
  • 観客の頭の中に浮かんでいる絵だけを想像して、
  • 観客が受け取る印象と情報に注目することで、
  • 冷静に分析しやすくなる、

と、僕は考えています。

構成

一歩引いた視点から見直すことも重要です。今書かれた脚本を、もう一度プロットに戻してみます。もともと使っていたプロットを読み直すのではなく、でき上がった脚本から、新たにプロットを書き起こすのです。

一度書いたシーンを、短くプロットにまとめようと思うと、自分がどこに力を入れて書いているかが分かりやすいものです。なぜかというと、短くするということは、飛ばしていいところは飛ばして書かなくてはなりませんが、力を入れて書いたところは飛ばしたくないからです。

そうすると、

  • あれ、気合いが入って書いちゃったけど、このシーン、いる?
  • 全体としてはこういうことを描かなきゃいけないのに、違うところに力入ってない?

ということに気づいたりします。本当は書かなきゃいけなかったことと、今書いているものがあっているかどうか、プロットに戻して比較します。

もちろん、全体の構成もそうです。プロットに戻すことで、ちゃんと意図した通りの流れになっているのかどうか、見直すのが容易になります。脚本のままだと、ついつい書かれているものに引きずられてしまいます。全体として何を描いているのか、きちんと確認しましょう。

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