1-4. 物語を一行で書き表してみる

書くべき物語が見えてきたら、一行物語を作ってみましょう。いろんなやり方がありますが、僕はこれを主人公の3ステップで作ります。すなわち「どんな主人公が、どうなって、どうなる」という感じです。

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適切な主人公はだれか?

まず最初に、アイデアのかけらから主人公を見つけ出さなくてはなりません。自分が観客に与えたい価値を担うに足る、主人公です。もしかしたら、候補が何人かいるかもしれません。その時に、選ぶ基準がいくつかあります。

  1. 最も変化しやすい人物

    最初はこうだったけど、次にこう思って、だからこうしたんだけど、最後にはこうなった、というような、主人公の変化の数が多い、あるいは振れ幅の大きい主人公は、ダイナミックな物語を生み出してくれます。
  2. 観客がだれの視点でこの物語を見たら、のめり込みやすいか?

    観客はその人物と同化したようになって、物語をいっしょに追体験してくれます。観客と目線を揃えやすいキャラクターは便利です。
  3. この物語で伝えたい価値観を内包している人物

    例えば、あなたがこの物語で伝えたいことが「人間の価値は金銭の有無とは別にある」ということであるとすれば、「金のことしか考えない」人物が主人公であれば、そのメッセージはすんなり観客に伝わるはずです。

もちろん、これらの要素を全部兼ね備えている人物がいたら、それに越したことはありません。

一行物語 〜 主人公の3ステップ 〜

主人公を決めたら、その「初めと真ん中と終わり」を決めましょう。(この「初めと真ん中と終わり」という言葉については、 プロットの項で詳しく書きます)主人公の初めの状態はどうであったのか、途中でどう変化したのか、最終的にどうなったのか。たとえば…

  • 初め「自分がどうしようもなく醜く、愛される資格がないと思い込んでいた男」が、
  • 真ん中「盲目の人との交流の中で人と触れ合う喜びを知り」
  • 終わり「心から人を愛せるように」なる

といったことです。これが、主人公の3ステップであり、一行物語です。これができたら、プロットに入れます。…というよりも、これが一番最初のプロットです。

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なぜこんなことを最初に考えるのか、疑問ですか?
物語というものは出来事を描くのではありません。人間を描くものです。登場人物たちが互いに関係し合う中で、選択し、変化し、成長していくこと、これがドラマであり、決して単なる出来事の積み重ねではありません。ですから、一番最初に主人公の変化を考えておくことは重要なのです。

もちろん、これから考えを深めていく中で、この一行物語もどんどん変わってくるでしょう。ですがまず、自分が書きたいもの、書くべき物語を定めるために、この一行物語を一度考えてみてください。必ず、役に立ちます。

ここでも、 以前の「脚本の書き方」から一部を引用しておきましょう。一行物語の作り方について、別のアプローチをしています。

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この記事を書いた人

渡辺和徳のアバター 渡辺和徳 9PROJECT LLC 代表社員

脚本家・演出家、9PROJECT LLC代表
(一社)日本文化大衆演劇協会アドバイザー

1999年、北区つかこうへい劇団に入団後、つかこうへいに文才を認められ、氏のもとで作・演出を学ぶ。現在は舞台、映像を問わず数多くの脚本・演出を手がける他、演技・脚本・児童向けアウトリーチ活動など、各種ワークショップの講師も行っている。

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